⼩児感染症|JR長尾駅・小児科|いのうえこどもクリニック

〒573-0163 大阪府枚方市長尾元町2丁目22-1
072-807-3753

小児感染症

Medical

⼩児感染症|JR長尾駅・小児科|いのうえこどもクリニック

小児における主要な細菌感染症

細菌感染症(呼吸器感染症、中耳炎など)

肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラカタラーリス

小児科での代表的な細菌性呼吸器感染症は肺炎球菌、インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスではありません)、モラキセラカタラーリスの3種の菌が主要な原因菌です。いずれも、気管支炎、肺炎、中耳炎などを引き起こします。
また、肺炎球菌、インフルエンザ菌は最重症の感染症である、化膿性(細菌性)髄膜炎、敗血症の主要な原因となっています。いずれも鼻咽腔培養、血液培養、髄液培養などの培養検査で診断されます。治療は抗菌薬で行いますが、抗菌薬の効かない耐性菌の出現が問題になっています。
肺炎球菌とインフルエンザ菌は定期予防接種の対象となっています。接種可能年齢になったら遅滞なく接種されることをお勧めします。

溶連菌感染症

A群β溶血性連鎖球菌による感染症です。飛沫感染し、潜伏期間は25日です。発熱、咽頭痛、イチゴ舌、頭痛、発疹を呈します。主に515歳にみられ、3歳未満の乳幼児にはまれにかみられません。
繰り返し罹患することがあります。抗菌薬を10日間以上内服します。内服開始後24時間で飛沫感染をおこさなくなるとされます。しかし
溶連菌感染後の急性糸球体腎炎やリウマチ熱といった合併症を予防する為に、症状消失後も処方された抗菌薬を飲み切ることが重要です。

百日咳

百日咳は百日咳菌の感染が原因でおこる、長期間におよぶ特有の咳症状を特徴とする感染症です。確定診断にはLAMP法(核酸増幅法)および抗体上昇を確認します。潜伏期は7~10日間です。
症状は特有な激しい咳込み(コンコンコンと連続する)、咳による顔面の紅潮、吸気性笛声(息を吸うときのヒューっという音)を繰り返すことが特徴的です。発症時(カタル期)は抗菌薬が有効ですが、一般の感冒と鑑別は困難であり、特有な咳が始まると抗菌薬は無効となり、2~3週間咳が継続します。
生後6か月までは特に症状が重症化しやすい(肺炎、脳症など)と言われています。ワクチンで接種可能な感染症です。ワクチン接種をお勧めします。

マイコプラズマ感染症

学童期の気管支炎、肺炎の原因となる感染症です。潜伏期間は23週間と長く、多くは乾いたコンコンした咳を伴う、上気道炎、気管支炎を発症しますが、自然治癒します。外来で咽頭ぬぐい液の迅速診断や、血清IgM抗体、胸部レントゲン写真で診断されることもありますが、症状と周囲の流行状況から診断されることもあります。自然治癒する症例もありますが、10%が肺炎になり、抗菌薬内服が行われることも多いです。呼吸器症状を伴わない場合もあり、長く続く発熱の原因としても知られています。

クラミジア感染症

クラミジアの感染により引き起こされる疾患の総称です。クラミジアにはトラコーマなどの眼感染症を起こすC.trachomatis、オウム病を起こすC.psittaciC.pnemouniae による肺炎などがありますが、呼吸器感染症について主に説明します。潜伏期間は26週間です。

C.pnemouniae 感染の多くが不顕性感染(症状が認められない感染)で、症状が出現しても上気道炎(いわゆる風邪症状)がほとんどです。一部が気管支炎、肺炎となります。症状は乾いた咳を認めますが、概して全身状態は保たれています。

眼感染症を引き起こすC.trachomatis は新生児肺炎を起こします。生後412週に発熱のない肺炎として発症します。またC.psittaci によるオウム病は鳥類から感染し、高熱、咳、頭痛で発症します。血清抗体価で診断します。抗生剤が有効です。

小児の主要なウイルス感染症

気管支炎・肺炎になりうるウイルス感染症

インフルエンザ(A, B型)

インフルエンザウイルスA,B型の感染により発症します。潜伏期は1~7日で流行はおおむね12月に始まり3月に収束します。発熱(37度台後半〜40度)、寒気、咽頭痛、頭痛、関節痛、倦怠感、咳嗽、鼻炎、などの症状で発症します。発熱は2〜3日で解熱しますが、その後、半日程度一旦37度台になり、38度台以上の高熱相となることもあります。

迅速診断キットで診断されますが、流行状況や症状から検査を行わず診断されることもあります。

抗インフルエンザ薬で治療されます。重症化を防ぐことができるとされている予防接種を受けることをお勧めします。

RSウイルス感染症

RSウイルス(Respiratory syncytial ウイルス)による感染症です。潜伏期間は4~6日です。ウイルス抗原迅速検査で診断します。適応は1歳までとなります。年長児や成人が感染した場合は、上気道炎(かぜ)症状のみで治癒します。乳幼児ではその後に喘息の様な「ぜーぜー」した呼吸音を伴う細気管支炎や肺炎に進展しやすいです。特に生後6か月の乳児は重症化しやすいとされます。

対症療法で症状の改善を待ちます。呼吸状態の悪化、哺乳・水分摂取不良の場合は入院が必要な場合もあります。

ヒトメタニューモウイルス感染症

ヒトメタニューモウイルスによる感染症です。潜伏期間は4~6日です。ウイルス抗原迅速検査により診断されます。検査の適応は6歳未満となります。大部分はいわゆる「風邪」症状ですが気管支炎、細気管支炎、肺炎が引き起こされることもあります。喘息の様な「ぜーぜー」とした呼吸になる場合もあります。対症療法を行います。流行期は3~6月で、RSウイルスの流行が収束した後に流行することが多いです。

新型コロナウィルス

新型コロナウイルス(SARS-CoV2)による感染症です。潜伏期間は1~14日です。診断は鼻腔咽頭粘膜拭い液または唾液のPCR検査、抗原定量検査が行われます。多くの症例では発熱、呼吸器症状(咳、のどの痛み、鼻水、鼻づまり)、頭痛、倦怠感がみられます。中等症から重症では間質性肺炎からの呼吸困難、呼吸不全に陥ります。

小児領域では新生児の感染は少数であり、重症化はしにくいと考えられています。また、保育園・幼稚園、学校で集団感染が発生してはいますが、小児感染例の8割が家族からの感染です。感染予防にはマスクの着用が重要でありますが、2歳未満のマスク着用は推奨されていません。窒息や熱中症のリスクがあるからです。2歳以上であっても、体調に合わせて、十分注意したうえでマスク着用を行ってください。本人の体調が悪い場合や、持続的な着用が困難である場合は無理に着用する必要はありません。(WHOでは5歳以下のこどものマスク着用は必ずしも必要ないとされています。)

感染予防が重要です。手洗い、マスク着用、密閉・密集・密接の三密を避ける、ことが重要です。(詳細は厚労省HPなどをご参照下さい)。

いわゆる夏風邪

ヘルパンギーナ

急に高熱をだし、口腔粘膜、軟口蓋に複数の水疱疹(みずぶくれ)ができることを特徴としたウイルス感染症です(コクサッキーA, B群、エコーウイルス)。潜伏期間は1~5日です。流行は夏にあり、毎年流行のみられる、いわゆる夏風邪のひとつです。手足口病と症状が似ていますが、手足には発疹や水疱は出ません。

手足口病

いわゆる夏風邪のひとつで、手のひら、足底または足背、口腔粘膜に小水泡疹を特徴とする、数年おきの流行があるウイルス感染症(コクサッキーA6、A10、A16、エンテロ71)です。
潜伏期間は1~5日です。
発熱は37~38度くらいが多く、1~2日で、大抵解熱し、3~7日で治癒します。

発疹性ウイルス感染症

はしか(麻疹)

麻疹ウイルスによる感染症です。潜伏期間は8~12日です。感染は空気感染、飛沫感染、接触感染で成立し、非常に感染力が強いことで知られています。診断は血清抗体価で行われます。
経過は38~39℃の発熱、咳、鼻水を伴うカタル期、一旦解熱した後の発熱と発疹と風邪症状を3~4日程度認める発疹期、その後解熱し発疹の消失する回復期の3期に分けられます。基本的に対症療法を行います。日本では予防接種により本邦では感染者が激減しており、予防接種による集団免疫の形成が大切です。予防接種により予防可能な感染症であり、必ずワクチン接種されることをお勧めします。

風疹

風疹ウイルスが感染することによる感染症です。潜伏期間は2~3週間です。
リンパ節腫脹、咽頭痛、頭痛などの前駆症状の後、発疹と発熱は同時に認めます。発熱は2~3日、発疹は3~5日で消失し治癒します。対症療法を行います。
また、妊娠20週未満の未感染の妊婦に感染した場合、胎児が先天性風疹症候群を発症します。
予防接種により予防可能な感染症であり、必ずワクチン接種されることをお勧めします。

水ぼうそう(水痘)

水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の感染することによって起こる感染症です。潜伏期間は14~16日です。VZVは空気感染、飛沫感染、接触感染します。診断は通常症状によりますが、必要時には血清抗体価の測定を行います。微熱と発疹で発症し、1週間程度で治癒します。発疹は丘疹、水疱(みずぶくれ)、痂皮(かさぶた)の順で進行し、すべての発疹が痂皮化したときに治癒と判断します。
通常問題なく治癒しますが、抗ウイルス薬を内服することもあります。また、発疹に対し塗り薬を処方します。
現在、水痘は定期予防接種に組み込まれています。接種可能な年齢になり次第、早めの接種をお勧めします。

突発性発疹

ヘルペスウイルス6型、7型の感染によって起こります。潜伏期間は10~14日です。典型的な経過は3~4日の発熱の後に解熱し、解熱とともに全身に発疹が出現します。通常臨床経過から診断され、対症療法を行います。合併症として熱性けいれん、脳炎・脳症があります。

りんご病(流行性紅斑)

パルボウイルスによる感染症です。潜伏期間は7~10日です。通常、臨床症状で診断されます。感染後7~10日後に1~2日の発熱を認めた後、感染14日~18日後にリンゴ病の由来である、両頬の紅斑および特徴的なレース状の発疹を認めます。感染力は発熱時に強く、発疹出現時には弱くなっています。

その他のウイルス感染症

おたふく風邪(流行性耳下腺炎)

ムンプスウイルスによる感染症です。潜伏期間は15~24日です。両耳の下にある唾液腺の耳下腺が腫れます。腫れた様子がおたふくのお面に似ており、おたふくかぜと呼ばれることが多いです。かぜ症状の後、高熱と両側または片側の痛みの伴う耳下腺の腫れを認めます。症状は1週間程度で消失するため、対症療法を行います。
難聴は、1000人に一人との報告もあり、感染後に注意が必要です。ワクチンは定期接種ではありませんが、接種することをお勧めします。

ヘルペス性歯肉口内炎

単純ヘルペスウイルスに初感染した乳幼児にみられる感染症です。
口腔粘膜、頬粘膜、舌、歯肉などに水疱、発赤、潰瘍を認めます。経口摂取不良な場合には入院で抗ウイルス薬の投与、点滴での水分補給が必要になります。単純ヘルペス感染症は他に新生児ヘルペスや脳炎なども起こします。

アデノウイルス感染症

アデノウイルスによる感染症で、様々な型があり、咽頭炎・扁桃炎、胃腸炎、結膜炎など症状を引き起こします。潜伏期間は呼吸器系で2~10日、消化器系で3~10日、眼感染症で7~10日です。38〜40度の高熱が5日前後と比較的長く認められます。眼球充血、咽頭痛、扁桃肥大、顔面の紅潮、唇の発赤を伴い、皮膚の紅斑を呈することがあります。ウイルス抗原迅速検査で診断されます。消耗や脱水により輸液や入院加療が必要になることもあります。